EU「互換性のある充電器を」AppleがLightningにこだわる理由

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Appleからの反発にもかかわらず、1月の欧州議会はEU全体のモバイルデバイスメーカーに共通の充電規格を確立するため新法案を可決したようだ。この記事ではEUの法律が最終的に取る判断と、ヨーロッパおよび他の地域のAppleデバイスユーザーにどのような影響を与える可能性があるかについて説明しようとおもう。




EUが求めいているものとは?

欧州議会(MEP)のメンバーは、コスト、電子機器の無駄を減らし消費者の生活を楽にするために、充電器がすべてのスマートフォン、タブレット、その他の携帯機器に適合することを保証する「拘束力のある措置」を求めている。

EUが実施した「ポータブルデバイスの一般的な充電器に関する2019年の影響調査」によると、調査対象者のほぼ5分の1が、非標準の充電器のために「重大な問題」に直面したと報告し、このような問題には、デバイス間の互換性のない充電器、異なる充電器間の可変充電速度、すべてのニーズに対応するために複数の充電器を用意する必要があることが示唆している。

さらに、EUは、共通の充電器規格に合意することにより、充電器の混乱と年間51,000トンの電子廃棄物に終止符を打つと主張している。

EUのアプローチの成果とは?

スマートフォンの共通充電基準を確立する欧州委員会の取り組みは10年以上にわたり、 2009年EUは5億台の携帯電話がすべてのEU諸国で使用されていると推定した。
使用された充電器は多くの場合、メーカーとモデルによって異なり、30種類以上の充電器が市場に出回っていることを発見した。

規格の統一を目指して2009年には、Apple、Samsung、Nokia、その他の著名なスマートフォンメーカーを含む14のテクノロジー企業が署名した。

MoU( 了解覚書のこと、「MoU」という表現は国家間の政府や行政機関が交わす契約に用いられることが多い )によると、電話メーカーは、欧州連合でスマートフォン充電器にマイクロUSBコネクタ標準規格を採用することに同意し、これにより携帯電話との完全な充電互換性が市場に投入される。

計画では新しい携帯電話をマイクロUSB充電器で一定期間販売し、その後、充電器を既に所有している顧客が既存の充電器を引き続き使用できるようにするために、電話と充電器を別々に販売するということのようだ。

Appleがmicro-USB規格の要件を満たすことができるかどうかについてかなりの議論があり当時AppleはiPhone、iPad、iPod touchの両方と互換性のある独自の30ピンドックコネクタを使用していた。(Lightningより前のモデル)

しかし、MoUはAppleに抜け穴を残してしまった。
USBmicro-Bインターフェースを持たない電話については、合意された条件の下でアダプターが許可さていたのだ。 2012年に、Appleは30ピンコネクタに代わる新しいLightning専用コネクタを搭載した‌iPhone‌ 5を導入し、さらに2009年のEU協定に準拠するために、別個のLightning to micro USBアダプタを提供し回避に成功した。

Appleのmicro-USB to Lightningアダプター

その結果、Appleは最終的に、専用のコネクタを放棄したり、充電目的でデバイスに個別のマイクロUSBインターフェイスを直接組み込んだりする必要がなくなった。

2009年のMoUが失敗と見なされたのはなぜか?

2013年2月にMoU署名者によって提供されたレポートには、2012年末までに署名者およびその他のメーカーによって市場に投入された新しいデバイスの90%が共通の充電機能をサポートしたことを示している。

しかしその統計が不自然に高かったのは、AppleがLightning to micro-USBアダプターを提供したという事実を考慮したからで実際のiPhoneはアダプターなしではマイクロUSB充電できないのでもっと低い数値が出てくるだろう。

欧州委員会のあるメンバーは、「市民と欧州議会の間の認識は、共通の充電器は実際には存在しないということであり、共通規格達成のためにはAppleにUSB規格の端子を導入させる必要があると主張している。今度はアダプターを認めることはなくなる」としている。

これに怒った欧州議会は「共通の充電器を開発するための新たな努力」を要求する無線機器に関する法令を可決した。この指令は委任されており基準を直接設定する権限を委員会に与える結果になった。

2016年、委員会は、micro-USBが時代遅れになり、USB-Cがほとんどのデバイスで事実上の標準になったことを認めた。
現在すべてのメーカーが新しい法令にに署名する姿勢で、USB-Cコネクターのみを使用するという解決策を維持するよう委員会は働きかけているようだ。

AppleがUSB-Cに反発する理由

2016年、AppleはUSB-Cの電源(充電プラグ)での標準化されたインターフェイスとしての採用をサポートしたが、デバイス自体の標準搭載には反対の姿勢を見せた。
同社は主にiPhoneがUSB-Cポートを搭載するには薄すぎるという主張し、USB-C規格に準拠すると最大20億ユーロの費用がかかり、イノベーションを妨げると主張した。

Appleは調査を依頼し、充電器の強制的移行による潜在消費者被害の概要を提示し反論

この調査では、USB-C使用法案が可決になった場合、消費者に15億ユーロの費用がかかり環境上の利益に関連する1,300万ユーロを上回ると結論付けた。
この調査ではEU世帯の49%が様々なタイプの充電器に依存しているが、重大な問題に直面しているのは0.4%だけであると主張している。

この問題に対するAppleのスタンスは委員会にわだかまりを残し、2018年に委員会は合意を達成するためにAppleと協力し続けることに同意したが1年後、委員会はメーカーが独自の解決策でアダプターを使用できるようになり、完全な充電規格の調和がもたらされないと結論付けた。

EUはここからどこへ行くのか?

委員会の2019年の一般的な充電器に対する影響評価に応えて、Appleは、すべてのスマートフォンに同じ充電ポートを強制する規制は「イノベーションを抑制」し「環境に悪い」「顧客に不必要に混乱をもたらす」と述べた。

委員会は新しい法律により、すべてのデバイスに不要なケーブルや外部アダプターが出荷されないようにするか、世界中の何百万人ものヨーロッパ人や何億人ものアップルの顧客が使用しているデバイスやアクセサリーを廃止しないようにしたいと考えており、可決された場合これまでにない量の電子廃棄物が発生し、ユーザーにとって非常に不便になることもAppleは懸念している。

確かに今現在使われているLightning規格の製品は廃棄されるのであるから環境への影響が考えられる。


EU議会のこの問題に関する2020年1月の投票は、充電器を標準化する規則を取り入れることに圧倒的に賛成であったが、それらを実施する具体的な方法は明確ではない。

委員会の評価では、立法案に対していくつかの選択肢が提示された。

選択肢0:ケーブルには、デバイス側にUSB-Cまたは独自のコネクターのいずれかがあり、アダプターは引き続き購入できる状態(現在の状態)。

選択肢1:ケーブルには、デバイス側にUSB-Cポートが必要である状態(AppleのLightningコネクタを事実上禁止している)。

選択肢2:ケーブルのデバイス側にUSB-Cポートが必要、またはデバイスで独自のポートを使用したいメーカーは、USB-Cから独自のコネクタへのアダプターを含める必要がある(Appleの場合、USB-C Lightningアダプターの導入必須)

選択肢3:ケーブルはデバイス側にUSB-Cまたは独自のコネクタのいずれかを持つことができる。独自のコネクタを使用することを選択したメーカーは、充電器側にUSB-C AC電源プラグを含める必要がある(AppleはUSB-C AC電源プラグを標準提供するが、「iPhone」には引き続きLightningコネクタを装備できる)。

選択肢4:デバイス側とAC電源プラグの両方のすべてのコネクタにはUSB-Cの相互運用性が必要(USB-Cのみ、Appleは新しいUSB-C充電器を作らなければならない)

選択肢5:デバイス側のすべてのコネクタはUSB-Cである必要があり、メーカーは新しい急速充電15W + AC電源プラグを含める必要がある(AppleはUSB-PD準拠の電源プラグを作成する必要がある)

ワイヤレス充電を潜在的な解決策として検討する中で、欧州委員会は、エネルギー効率が約60%の「初期技術」であり、有線技術は100%に近い効率であると結論付けました。(無線充電機能があるからといって標準規格の導入は避けられない)

全体として、欧州委員会の影響評価で最も効果的なアプローチは、選択肢4(相互運用可能な外部電源)と組み合わせて選択肢1(共通コネクタ)を追求することであることを示唆している。委員会がこの選択肢を採用した場合、Appleは独自のLightningコネクタを使用する新しいモバイルデバイスを製造できなくなるがしかし、欧州委員会がその影響評価の勧告を受け入れ、それをEU法に押印するかどうかはまだ分からない。

創造性やクリエイティビティは守られるのか?

EUの目標は将来の技術革新を妨げることなく市場での充電ソリューションの断片化を制限することを目的としているようだ。
充電器を標準化することにより、価格を下げて品質を高め、偽造充電器の存在を減らし、ユーザーの安全性を高めたいと考えている。

また、さまざまなタイプの充電器を購入する必要性を減らし、すでに所有している充電器を再利用できるようにすることで、電子廃棄物の削減/最小化を期待しており。これにより、消費者の利便性も向上する可能性がある。

Appleがヨーロッパの規制に準拠するために行う必要のある変更が、金銭的または実際的な理由で世界中の他の市場でも行われるかどうかは不明であるままだがいずれにせよ、提案された法案がどのように展開されようとも、市場を規制するというEUの意図に反してロビー活動を続けるつもりであるという。







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